#15 放置竹林が“親子の遊び場”に!?西田中・見松寺で広がる竹クラフト体験

コラム

KAMURIコミュニティプロジェクトの連載コラム、今回は泉区西田中・見松寺の副住職 小林宗明さんが語ってくれた“竹クラフト”のお話をご紹介します。

放置竹林をきっかけに始まった活動が、親子三世代の交流の場へと広がっているとのこと。小林さんの想いが込められた文章をお届けします。

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竹とともに暮らす、お寺の日常

竹は日本の風景に欠かせない存在であり、その美しさは自然と人々の生活を調和させてきました。山々に囲まれた地域では竹林が広がり、四季折々の風景に溶け込んでいます。特に春の新緑や秋の紅葉と絡み合う竹林の美しさは、多くの人を魅了するだけでなく、地元の人々にとって心の拠り所となっています。

また、竹はその強さとしなやかさから、古くから生活の中で重要な役割を果たしてきました。地元の伝統や自然への感謝の心を込めて作られる竹細工は、単なる道具や装飾品以上の価値を持ちます。

私が生活するこの見松寺も、後ろに山を背負い、隣には竹林がある環境です。幼い頃から、境内に自生する竹を使って、竹ぼうきや竹垣、行事で使う竹飾りなどを作ってきました。何より、春に採れる筍は私の好物でもあり、毎朝せっせと掘りに行っては、みそ汁や煮物、天ぷらなどにして美味しくいただいてきました。

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放置竹林がもたらす“竹害”とは?

しかし近年、竹害の問題が増えてきました。放置された竹林が、周囲の森林や自然環境に与える悪影響のことを指します。竹は成長が早く、地下茎が広範囲に伸びるため、周辺の雑木林を枯らして景観を変えてしまいます。また、根を深く張らないため土壌崩壊が起こりやすく、土砂災害のリスクも高まります。

この話を地域の方から聞き、「放置された竹林をなんとかできないか」と相談を受け、私も何かできることはないかと考え始めました。自分で竹垣を組んでみたり、地域の方々と協力して竹林の間引きを行ったり、市民センターの企画として参加者を募集し、竹の魅力を伝えつつ、切り出した竹を使って箸や器を作る活動も行いました。

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竹細工から広がる、親子三世代の時間

正直なところ、「このご時世に竹細工なんて、子どもは参加しないだろう」と思っていました。しかし、参加者のほとんどは家族連れで、親子やお孫さんと一緒にという方が多く、なかには親子三世代で申し込まれた方もいました。

昔は、子どもたちが自分で竹を削って水鉄砲や竹とんぼ、竹馬などを作り、その工程自体が遊びでした。親から遊び方を教わり、時には競うこともあった。でも今は、逆に子どもから教えてもらうことが多く、教わってもできないものも増えました。

遊びの概念が変わってきた現代で、こうして一緒に竹を削り、作品を作っている光景はとても感慨深いものでした。参加した子どもたちは「またやりたい」「今度は違うものを作ってみたい」と口々に話し、満足そうな様子でした。

また、おじいさんやおばあさんが笑顔で小刀の使い方や竹の扱い方をお孫さんに教えてあげている姿は、とてもいきいきとして見えました。この場だけのことかもしれませんが、竹という素材を通して、家族のつながりだけでなく、歴史的なつながりも垣間見えた気がします。

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灯りに込めた願い——竹灯籠づくりの風景

そして、これもまたご縁で、地域の造園屋さんから竹灯籠の作り方を教わりました。インパクトドライバーで竹に穴を空け、お釈迦さまや鳳凰などを彫り、年に2回、元旦とお盆の入りに竹灯籠に明かりを灯して、石仏や階段を照らします。

見に来られた方々からは「お寺という場所も相まって、幻想的で素敵な空間だ」「地域の風物詩になればいい」といった嬉しい声をたくさんいただきました。本当にいつか、地域のみならず多くの方々にお寺へ足を運んでいただき、歴史あるこの場所で、お盆や元旦といった変わらぬ文化の中、竹灯籠が織りなす温かな光と浮かび上がる作品を目にしていただきたいと思っています。

その空間の中で、自分自身の時間だけでなく、家族や友人と共有できる時間を提供できたら幸せです。

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受け継ぐということ。自然と伝統と、この地域と

自然との共存や、世代を超えて受け継がれる地元文化や歴史。今回は竹細工を通じて、多くの人に自然の美しさと地元の歴史、言うなれば“伝統の深み”を再発見していただけたように思います。

それを次世代へ伝えていくこと。それこそが、この地域の方々に自分の子どものように育てられ、いま副住職として務めさせていただいている私の使命だと感じています。

自然にあふれ、穏やかな時間が流れるこの地域の魅力。そして、温かく愛情あふれる方々から学んだ伝統を、これからも多くの人に触れてもらえるような活動を続けていきたいと、いま強く思っています。

イベント情報等、詳しくはKAMURIのInstagramをご覧ください。

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編集部のつぶやき

竹林と聞くと、景観の一部という印象があるかもしれません。でも、実は“竹害”という形で自然環境を脅かす一面もある。そんな背景から、竹を削って箸や器をつくる体験が生まれ、今では親子や孫と一緒に楽しむ場になっているのがすごく印象的でした。

見松寺という地元の場所で、世代を超えた交流とものづくりが重なる光景。それはまさに“地域と共に生きる”というKAMURIのキーワードを体現しているように感じました。

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